vol.2 小田愛さん
子育てが一段落してから好きなものづくりの世界に戻り、京都の設計・施工会社「株式会社雅組」で、空間デザイナーとして活躍する小田愛さんに、3Dパースやお仕事についてお話を伺いました。
小田愛さん
――本日はお忙しいところお時間をいただきましてありがとうございます。早速ですが、現在、勤めていらっしゃる会社と、小田さんのお仕事についてお聞かせください。
小田さん:現在、主に注文住宅、店舗や医療施設の設計と施工を手がける「雅組」で、PCを使って3Dパースを描いています。お客様の要望を設計士がヒヤリングして作成した図面や材料情報を基に、図面では分かりにくいところを3Dパースで立ち上げてお客様へ提供する仕事です。
今は社内だけではなく、インスタを見たと言って、鹿児島や岡山からのお客様の仕事もあり、忙しいときには複数同時に進めたりしています。
――建築、設計系のお仕事は長いのですか?ずっと3Dパースを専門にされていたのでしょうか?
小田さん:結婚、子育てで離れていた時期もありますが、新卒後、設計事務所で事務や2DCADを使った簡単な図面作成の仕事をしてきました。3Dパースは今の会社へ転職してから覚えました。それまで外注していた3Dパースを社内で作成することになり、SketchUpを使っている先輩に教えてもらいながら勉強したのです。学校に通っていた時に手描きのパースを描いたことはあるのですが、ソフトを使っての3Dパース作成は初めてだったので最初は大変でした。
――手描きのパースや2DCADも経験されていたのですね。3Dパースのソフトを使われてどのように思われました?
小田さん:もともとものづくりが好きだということもありますが、平面から立体になる面白さがありますね。描きたいと思っている図面通りに立ち上がります。レンダリングして、素材の質感をそのまま出せた時は嬉しいですし、すごいな、と思います。
お仕事の作品1 住居の内覧(鳥瞰図)パース
また3Dパースは、どの角度からも見られるのが良いですね。お客様も3Dの方が分かりやすいみたいです。
――1つのパース画を完成させるのにどのくらいの時間が必要なのですか?
小田さん:照明やクロス等を描くと、レンダリングに時間がかかるので、3日ほどでしょうか。素材データがない時には、インターネットで探したり自分で加工することもあります。またレンダリングした結果、色目や表現したい質感と違うことがあり、その場合には光源を変えてレンダリングし直してイメージに近くしていきます。
――お仕事をされている中で気をつけていることや難しいと感じられることは何でしょうか。
小田さん:つい自分好みに仕上げてしまいがちになりますが、お客様の要望、生活スタイルを読み取り作成することが大切だと思っています。建具の取り合いや窓枠、巾木など、細かい部分を理解して描き込むことも求められます。
レンダリングで上手く反映されない時にはどうしたら良いのかと悩んだり、お客様へお見せする画面のアングルの選び方についても難しいと感じることがあります。
――お仕事の面白さはどんな時に感じられますか?
お仕事の作品2 店舗のパース
小田さん:完成したパース画をお客様へお見せした時に「わぁ~!」と喜んでくださる姿を見ると嬉しいです。また完成した実際のものを見るのも楽しいですね。
奇抜な色を選ぶお客様もいらっしゃるのですが、そのお客様が選んだクロスを描いたパース画を見て、実際には異なる色で完成されることもあります。そういう風に、検討の一つの段階で使ってもらえるのもありがたいです。
今は、医療施設や店舗が多いのですが、一般住宅の建築でも一度はパース画を作ってほしいと思います。
――今後勉強したいこと、やってみたいことはありますか?
小田さん:個人的には、時間に余裕ができたら絵画を描きたいと思っています。仕事では、「また私に依頼したい」と思われるように仕事をしていきたいと思います。3Dパース作成ソフトのレンダリングの時間が短くなり、多くの方が気軽に依頼できるように、建築パース、3Dパースが広がると良い思い、そのためにも、レンダリング時間を短縮する方法や、短縮できるソフトを探しています。
またこの2月から社内の女性3人でチームを作り活動を開始しています。一人は一級建築士、もう一人は収納アドバイザー、そして私の3名です。それぞれの得意分野を生かし、女性ならではの感性で、お客様の要望にお応えしていくチームです。将来は、このチームで一軒の家をトータルサポートできれば良いなと思っています。
――小田さんは2019年度Space Designer検定試験では銀賞を受賞されました。最後にこの試験についてお聞かせください。
小田さん:先ほどの女性3人のチームのほかの2人は資格を持っています。私はパースを専門にしているので、パースの資格を取りたいと探したところ、Space Designerの資格を知りました。
試験を通して、課題として規定されたサイズに合わせるのが難しく、仕事ではそこまで描けていなかったと勉強になりました。
また同じ課題でも他の受賞者の方の作品の色合いやイメージが異なっているのも面白いな、と思いました。
小田さんが、施設や住居を建てる時の3Dパースが果たす役割の価値を、現場で肌で感じながら仕事をされているのがよく分かりました。「3Dパースがもっと広がってほしい」という想いを、私たちも試験を通して支援していければと思います。お忙しい中、ご協力いただきましてありがとうございました。
小田さんの受賞作品は、こちら>>>