vol.13 小野 一弘さん
モノづくりを支える金属加工機械の総合メーカーにお勤めの小野さんは、CAD/CAMソフトウェアの提案から、導入立ち上げ、さらにアフターフォローまで、お客様へ幅広いサポートを提供されています。そんな小野さんに、お仕事や3次元CADについてお話しを伺いました。
小野 一弘さん (Zoom画面のキャプチャ)
―本日はお忙しいところありがとうございます。現在、勤めていらっしゃる会社とそこでのお仕事についてご説明いただけますか?
小野さん:国内の主に板金製品を加工する機械の総合メーカーに勤めています。板金製品というのは耳慣れないかもしれませんが、鉄の板を切り抜き、折り曲げ、組み立てて溶接して造るモノで、例えば、自動販売機やATMのフレーム、家電製品やパソコンなど、身近なところで使われています。
板金の製造は、折り曲げたり、切り抜いたりとさまざまな工程があり、弊社は、各工程の機械や、板金に関わるソフトウェアを総合的に開発、販売しているメーカーです。
私は、販売から、導入の立ち上げ、サポート全般まで、ソフトウェアのお客様サポートを担当しています。全国各地に営業所があり、私は仙台を拠点に、宮城県と山形県の2県で、200~300社くらいのお客様を担当しています。
―大変ですね。お客様先へ訪問されるのですか?
小野さん:使い方などは、本社が提供する講習会や専用問い合わせ窓口があるので、サポートが毎日あるわけではありません。最近はオンラインによるリモートの支援もありますが、基本はお客様のところに訪問します。業務の9割くらいは車でお客様先へ伺っています。
―サポートと販売のご提案の仕事の割合はどのくらいですか?具体的にどのような内容なのでしょう?
小野さん:今は、7割くらいが販売の提案です。機械を動かすためにはCAD・CAMソフトウェアが必要なので、機械を導入されたお客様へ、こういうソフトを使うと効率が上がりますよ、という提案をしています。またソフトと一緒に導入されているハードウェアの入れ替えの提案もします。
お客様は、メーカーが設計した2次元図面を受けてモノを造られる企業が多く、2次元CADが主流なのですが、最近は3次元CADの需要も増えてきていますね。
―3次元CADの良いところはどんなところでしょう?
小野さん:画面で3次元の形状が確認できることです。個々の部品を組み上げていった時にぶつかる、ぶつからないであるとか、扉を開けた時の干渉とかを画面上で見られるので、試作品を作らなくてもそこで完結できるところがメリットだと思います。
―なるほど。今まで関わられて印象に残ったモノはありますか?
小野さん:そうですね。3次元CADを使ったメリットという点でいうと、工場やビルなどに設置されている配電盤でしょうか。配電盤は雛形の形状が一緒で、縦横高さが少しずつ違うものが結構多いんですね。例えば、20点の部品で構成されている一つの配電盤のXYZの長さが変わると、各部品に影響します。2次元で作成する際にはその20点の部品を一個ずつ作り直さなければなりません。3次元では一つの画面で20個の部品を構成できるので、製品全体に寸法を与えて、その寸法値を変えるだけで、各部品の寸法も伸び縮みするようにできます。パラメトリック変形という機能なのですが、この機能を使って非常に時間が短縮できました。効果がはっきりして、お客様にも大変喜んでいただきました。
―それは画期的ですね。仕事をしていて良かったと思われるのはそういう時ですか?
小野さん:はい、提案した商品を導入されたお客様が最大限の効果を発揮され「ありがとう」と言ってくださるのが一番だと思っています。それができるように日々頑張っています。
―お客様とのコミュニケーションが重要ですね。
小野さん:そうですね。機械を導入されると、10年、20年と長くお使いいただくので、その間はソフトウェアも必要です。ご縁といいますか、一度導入していただいてそれで終わりということはないです。私も、我々の先輩方もそうですが、お客様からの信頼を得られるように接してきています。
信頼されていることが強みであると思うので、下手な提案はできません。私としてはいつもお客様の視点に立って考えていますが、販売も考えなければならないのでそのバランスが難しいです。
また板金は、お客様によって形状が異なり、使い方も違うので、最適な効果を引き出すアドバイスができるようになりたいと考えています。そのためには、3次元CADも分かっていないといけないと思い、今回、3次元CAD利用技術者試験を受けました。
―お話がでたので試験についてお聞かせください。受験するきっかけは何だったのでしょう?
小野さん:自分のスキルを確認したいとネット検索でCADの資格を探しました。ベンダーの資格試験はありましたが、ソフトウェアに関わらず一定の技術レベルを確認できる資格が欲しいと思っていたところ、そういう内容のものはこの試験だけでした。 またお客様から「CAD利用技術者試験ってどう?」「CADの資格は何かある?」と聞かれることもあるので、資格を持っていれば適切なアドバイスができると考えました。
―実際に受けてみていかがでしたか?
小野さん:板金の形状は箱物なので、試験問題にあるようなRの多い形状は普段使いません。そのため、試験に合格するためにこの機能を使い、そこは難しかったです。使わない機能を使えるようになり、また知識が広がったのは良かったと思います。意欲のある方にはお勧めしたいですね。
―ありがとうございます。最後に、今後やってみたい事などありましたらお聞かせください。
小野さん:今回、自分なりに計画をたてて準1級に合格したので、いずれ1級も受験しようと考えています。また仕事については、今の仕事は自分に合っていて充実しているので、このまま定年まで続けていきたいと思っています。
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お仕事の話を楽しそうに話されていた小野さん。中小企業のお客様は、人手不足や高齢化により3次元CADを使える人を育てるのが難しいのが悩みの一つとも。充実して仕事に取り組まれている先輩をご紹介することで、一人でも多くの方に3次元CADやモノづくりに興味をもってもらえたら嬉しいです。お忙しい中インタビューにご協力いただきましてありがとうございました。