ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会

CADエンジニアの先輩に聞く

vol.11 石井達也さん

2020.8.3

メカニカルからエレクトロニクスまで幅広い分野において設計・開発を請け負うエンジニアリング企業で、設計・製作者としてCADを活用している石井達也さん。今回は、設計だけではなく、製作まで携わられている石井さんにお話しを伺いました


石井達也さん
石井達也さん

―お忙しいところお時間をいただきましてありがとうございます。まずは石井さんの会社と担当されている仕事について教えてください

石井さん: 工場の生産設備やプラント設備、また半導体やPCアプリケーションまで、多種多様な設備、機器およびソフトウェアの設計と製作を請け負うエンジニアリング企業に勤めています。僕はそこでFA(ファクトリーオートメーション=工場自動化)機械の設計と製作を担当しています。

―お客様から依頼を受けて、設計、製作されていくのでしょうか?

石井さん: はい。ものによっては、仕様書と設計書だけを納品する場合もありますが、依頼がくると製作内容を詰めて提案書と見積もりを提出し、正式な発注を受けて設計、製作を進めます。顧客との仕様の打ち合わせを基にして設計、図面を描き、商社やメーカーなどへ部品の製作を手配。さらに(自社に組立場を持っていないため)外部の組立会社での組み立てを指揮し、完成すると現地へ据え付けに行きます。CADを使っての設計、図面作成が主な仕事ですが、1日中CADに取り組んでいる日もあれば、出張で出かける日もあります。

―設計だけではなく、製作、設置まで担当されているのですね。CADはどこで習得されたのでしょう?今のようにお仕事を一人で担当されるようになるのにはどの位かかるのですか?

石井さん: 大学でCADの基本的な操作を、また入社した後の新人研修でも1、2週間ほどの研修がありました。今の部署に配属されてからも2ヵ月間の研修があり、その後、先輩の指示のもと仕事に関わるようになり、2、3年目には現在のような仕事を任されるようになりました。

―これまでで印象に残っているものはありますか?

石井さん: わかりやすいのは液晶基板の搬送ラインですかね。大きな液晶基板からスマートフォンに最適なサイズに加工して次の製造工程に搬送する機械です。この時は2~4人のチームで、設計に4ヵ月、製作・組み立てに3ヵ月。設置してから2ヵ月ほどは毎日現場へ通って、試験的に動かして問題を見つけては対応し不具合率を減らし、ある程度流れるようになったら自社に戻り必要に応じて現場に行きました。完成したのは6ヵ月後くらいでしょうか。
現場では他社が作った機械と連動して動かすので、問題の切り分けなども難しかったです。本来はもっと期間が欲しかったのですが、納期が厳しく大変だったこともあり印象に残っています。

―CADの技術のほかに、仕事ではどのようなスキルが求められるのでしょうか?

石井さん: 入社する前は設計の仕事なので技術的なスキルが大切だろうと思っていたのですが、実際には話し合いの場も多く、対人スキルが非常に大事だと感じています。顧客との打ち合わせや、関係する会社とのやり取りが多いのでコミュニケーションが重要です。
また昔と違い納期や要求金額が厳しいため、設計にかけられる期間が短くなっています。そのため3DCADによる構造解析や動作時の干渉チェックなどの便利な機能を使いこなすスキルも求められますね。

設計に取り組む石井さん"
設計に取り組む石井さん

―設計されている時には、CADデータを介してお客様とコミュニケーションを取ることも多いのでしょうか?

石井さん: はい、完成前の打ち合わせでも設計中のCADの画面を見ながら話し合うことが多いです。今は3Dが主流なのでなおさらそうなっています。
顧客の指定するCADソフトの習得も必要ですし、同じソフトウェアでも異なるバージョンのために画面の雰囲気が変わることがあるので、僕はすぐに対処できるようによく使用するコマンドはショートカットキーを覚えるようにしています。

―そういうちょっとした気遣が信頼につながり人間関係を円滑にしますよね。CADを仕事にしてよかったと思われることは何でしょう。

石井さん: 元々ものづくりが好きで今の仕事に就きました。CADを使って自分の想像したものを形にしていくことは非常に楽しいです。

―石井さんは設計だけではなく設置までされるので、最後までご自分の目で見ることができますものね。

石井さん: 最初のころは設計したものが動くか不安に感じたこともありました。自分達の設計したものが完成し、動いて、納品されると、嬉しいですしやりがいを感じます。

―今後、習得したいスキルなど、何かありますか?

石井さん: 僕はまだ30年以上現役としてこの仕事を続けていくので、今後3DCADに変わる新しい技術がでてきたら、積極的に習得し、資格も取っていきたいと思っています。

―最後に、石井さんが取得された3次元CAD利用技術者試験についてお聞かせください。

石井さん: 会社では資格取得を推奨しており、合格すると受験料を負担してくれ、人事評価にも影響します。ITやシステムなどのエレクトロニクス系とは異なり、機械設計の資格は少ないのでこのCAD利用技術者試験は貴重だと思っています。

 

ご自身が設計したものが形になり動くところまで責任をもって担当されている石井さん。難しい事も多々あると思いますが、ものづくりの醍醐味を感じ、仕事を楽しまれているようで羨ましくなりました。またインタビュー前から気を使っていただき、コミュニケーションを大切にされているお人柄が偲ばれました。お忙しい中ご協力いただき、ありがとうございました。