ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会

CADエンジニアの先輩に聞く

vol.9 林宏さん

2020.6.25

CADを使う仕事というと、すぐに思い浮かぶのは設計者やCADオペレータかもしれませんが、その他にも、CADを教えたり、メーカーとしてCADを販売する仕事もあります。今回は、講師としてCADに関わっている、Winスクールのマネージャー林宏さんにお仕事について伺いました。


林宏さん
林宏さん

――はじめに、林先生が講師をされているWinスクールについて教えていただけますか。

Winスクールは全国、AI、IoTなどの最新技術から、2DCADや3DCAD、映像やWEB制作まで、コンピュータに関わる専門技術について幅広く個別指導しているパソコンスクールです。初心者の方から経験者の方まで、スキルアップをされたい方に個別レッスンをおこなっております。

――スクールで林先生はどのようなお仕事をされているのでしょう?

私はインストラクターから始めて、今は関西や東海エリアの講師管理を担当しています。また、Winスクールにはオンライン校があり、そこの統括管理も兼任しています。

最近は新型コロナウイルス感染予防の影響で、WEB会議システムのZoomを使ったリアルタイムのオンラインレッスンの希望者が増えています。これは、受講者のPCをオンラインでつなげて、CADの練習の様子を講師の画面に写し、作業している様子を講師側で確認しながら、リアルタイムにアドバイスや指示を行うレッスンです。講師業務も行っておりますが、新しいカリキュラムの企画や運営に関する管理業務を行っています。

――大学でのご専門はCADに関わるものだったのでしょうか?どのようなきっかけで、今のお仕事に就いたのですか?

子供の頃から本が好きで大学は文芸学部でした。卒業後、最初に就いたのは雑誌編集の仕事だったのですが、3年ほどのちに、雑誌編集の技術を磨くためにデザイン系の勉強をしようと考えてハローワークへ行きました。そこにスクール講師の募集があったので、教わるよりも教える方が勉強になるだろうと思い、今の会社に入り、社内研修でソフトと講師について学びました。当初はデザイン系のソフトウェアの講師をしていましたが、WinスクールではCAD講座の要望も多く、AutoCADも指導できるように、学習していきました。

――CADは社内研修で習得されたのですね。CADに触れてどのような印象を持たれました?

CADは面白い、と思いましたね。スキルの習得度によって、ゴールとなる図形に至るまでの作図スピードが違うことが面白いと思います。これまでのデザイン系とは異なり、完成が分かっていてパズルを解くような感じで楽しいです。

――CADを担当されて面白いと感じるところはありますか?

会社から受講される方は業務の図面を持ってこられることも多く、建築、土木、エンジン図面などいろいろな図面を見させてもらいます。それらの図面には業界ごとに特徴というかルールがあり、それを知ることがすごく面白いです。図面を描いているうちに「どういうルールでこの設計(例えば角度)になるのだろう」と疑問に思い、社内の理論を学習する教材を使って学んだり、インターネットで調べると、それぞれが奥深く興味がつきません。

――テキストを離れてのレッスンだと講師の方は多種多様な図面に対応するので大変ですね。今までご覧になった図面で大変だと思ったものはありますか?

印象に残っているのはプロペラですね。何かしらの暗黙的なルールや、直接図面には載っていない寸法があるらしい、という図面で、どう調べていいかに悩みました。そのほかにも有名なお寺の図面で、円弧の部分の屋根の半径などが記述がないので分からず大変でした。

林先生による教室でのレッスン"
林先生による教室でのレッスン

――仕事をされている中で、やっていて良かった、また楽しいと思うときがあったらお聞かせいただけますか。

受講生の成長を感じられる時ですね。今までCADを全く知らなかった方が、ソフトの使い方を知り、スピードアップや効率化を身につけ、さらに私が気づかなかったことを受講生の方から教えてくれるような状態になるタイミングがあります。そうなると教えていてよかったなと思います。「先生いなくてもなんとか大丈夫です」と言われるまでになると嬉しくなります。

――プライベートでも仕事の上でも、何か将来やりたいことがあったら教えてください。

将来的には、海外にも指導ができるようにしたり、その技術が必要になったタイミングですぐに学べるようにするなど、場所や時間などに関係なくスキルアップができる環境を作りたいです。教える方も、自分で選んで好きな場所、好きな時間で教えることができれば、より多様化した働き方ができると考えています。

――林先生は、CAD利用技術者試験とSpace Designer検定試験の資格を取得されていますが、試験についてお聞かせください。

CAD利用技術者試験は、会社から資格取得費用が全額負担され、資格取得を希望する受講生の方も増えているので、受けようと思い受けました。対策講座も行っているので合格の仕方は分かっているのですが、実際に受験を体感して試験会場の雰囲気とか受講生に伝えられればと思いました。

また弊社では、3DCADのVectorWorksの指導もしており、ツールの使い方に留まらずにクオリティの高い3Dパースを作成できる講師を育てたいとの考えから、スクール講師のみんなでSpace Designer検定試験を受けてみました。 内容はすごく面白い試験だと思いました。「こういう家に住みたい」と想像しながら取り組みました。(ただ、CADと違って完成形がないため)どこまで作り込むか、ゴールが分かりにくいところが難しかったです。


受講生の成長を心から喜ばれる林先生。穏やかで丁寧にお応えいただき、私がもしCADを習うなら、ぜひ林先生に教えを請いたいと思いました。コロナ禍対応でお忙しいところご協力いただきましてありがとうございました。