ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会

CADエンジニアの先輩に聞く

vol.7 宮崎徹太郎さん

2020.01.15

さまざまなものづくりで使われているCAD。今回は、機械設計の仕事に就くために3次元CAD利用技術者試験1級を取得し、現在は、東京工業大学に戻られ、機械科の修士課程で研究活動をしている宮崎徹太郎さんにお話を伺いました。


宮崎徹太郎さん"
宮崎徹太郎さん

――本日はお忙しいところありがとうございます。現在、どのような研究をされているのでしょうか。

宮崎さん:この4月から、機械系機械コースの研究室で、カーボン素材を使った先端デバイスに関する研究をしています。今は、研究の準備段階として、その素材を生成するための実験装置(真空加熱炉)の立上げと、必要な冶具などを設計・製作しているところです。

――研究では、必要な実験装置の設計から製造まで、全てご自身でされるのですか?

研究の流れ"
研究の流れ

宮崎さん:はい。基本的にはすべて自分一人でやります。装置のカタログや卒業生の残した資料・論文を参考にしながら、電気系統の接続や、冷却水ホースの接続などを確認しつつ設計していきます。機械加工は、技術職員にも頼めますが、予約一杯で時間がかかるため大学内の工場を利用して自分で作ります。いろいろなフェーズがあり難しいこともありますが、ものづくり全体が見えるので楽しいです。

――その実験装置の設計でCADを使われているのですね。

宮崎さん:研究を進めていく際に、プレゼンテーション用資料で先生に説明するのですが、実験装置などの立体の説明は3次元モデルの方が2次元よりも具体的で、理解してもらいやすく、説得力があります。また3次元モデルから機械加工用の図面を起こせば時間効率もいいですし、CADを使わない設計は考えられません。

――CADはどこで習得されたのですか?

宮崎さん:実は、私の元々の専攻は機械工学でなく電気電子工学でした。新卒で内定した企業で半導体の回路設計の仕事を志望したのですが、設計とは関係のない部署に配属されました。仕事はしていたものの、やはり設計に携わりたいと思い、機械設計の仕事への転職を目指して職業訓練校で6ヶ月間CADを学びました。 3次元CAD利用技術者試験1級は、転職活動で自分のCADのスキルを証明するために取りました。そのおかげで、タイヤメーカーで設計補助として、その後、機械メーカーで工場の生産ラインの自動化機械の設計に携わることができました。

また、実際の仕事では過去に設計された図面をもとに新しく設計することもあるのですが、改訂前図面が2次元CADデータの場合も多いです。そのため2次元CADのスキルも必要だと考えて、2次元CAD利用技術者試験1級も取得しました。この試験は、CADだけではなく機械設計の知識もきちんと学べたのが良かったです。

――設計のお仕事も充実されていたようですが、その後大学院の機械科へ進まれたのですね。

宮崎さん:仕事で機械設計についてはある程度勉強しましたが、前述のように私の元々の専攻は電気電子工学でした。先々、機械設計の専門家として、プロフェッショナルを目指したいと考えて、働きながら大学院入試の受験勉強をし、この春から大学院に戻り機械工学を学んでいます。時代によって研究テーマは変わるかもしれませんが、まずは博士課程まで進み、その後も研究を続けていきたいと思っています。

――最後にこれまでのご経験から、3次元CADはどのようなところが良いとお考えかお聞かせいただけますか。

宮崎さん:設計にかかる時間が、2次元CADよりも3次元CADの方が圧倒的に短いです。また2次元CADで描かれた図面は正確でない場合があり、3次元に起こそうとするとき、矛盾している部分を作れないことがよくあります。そういうことを考えても3次元CADの方が間違いないです。また、アセンブリできるのも強みです。アセンブリ後の全体像で考えないと寸法などの詳細設計はできないので、3次元CADの方がより設計しやすいと思います。


私たちが日常目にするものだけではなく、研究室で基礎となる素材の研究用装置といった分野でもCADが活用されていると知り、改めてCADの広い範囲での有効性を再認識し、さらに、普段接することがない大学の研究室での興味深いお話を伺うことが出来ました。お忙しいところご協力ありがとうございました。