ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会

CADエンジニアの先輩に聞く

vol.6 山口順一さん

2019.10.24

新聞記者からCADエンジニアへ。全く異なる業界から転職された山口順一さんにお話を伺いました。


山口順一さん
山口順一さん

――まずは現在のお仕事のことからお話いただけますか。

山口さん:社員契約をしている特定派遣会社から派遣され、飲食関連の機器メーカーで3次元CADを使った自動販売機の設計をしています。コンビニにあるコーヒーサーバーや冷蔵・冷凍庫などを製造している会社で、自動販売機を担当しているのは4名です。自販機は新たに一から設計することはほぼなく、上司から示される方向に基づいて過去の3Dモデルを編集して設計しています。

――最初からCADを使ったお仕事だったのでしょうか。

山口さん:いえ、大学では心理学を勉強し、卒業後は地元の新聞社で記者をしました。2年後に、職業訓練校で機械加工の講習を受け、この業界に入りました。

――新聞記者からCADを使った機械設計ですか!全く異なる業界へ転職された動機は何だったのでしょう?

山口さん:記者として取材活動する過程でものづくりに携わる人たちに会い、皆さんがとても楽しそうに見えました。私もぜひその仲間に入りたいと思い、ものづくりの業界に飛び込みました。記者は大切な仕事ですが、誰かが築いた基礎がなくては成り立たない職業です。その基礎を築く人たちはとても尊いものだと感じました。しかし自分にはエンジニアとしての基礎がなかったため、それを補うための手段としてCADに特化したエンジニアになることにしました。

――それで職業訓練校に行かれCADを勉強されたのですね。

山口さん:そこでは、CAMや3D CADの講習もありましたが、さわりを知っただけで、実際にはこの後の派遣先となった山梨にある工作機器メーカーで仕事をしながらSolid Worksや設計を覚えました。ここから今に至る14年間、3D CADの仕事を続け、設計はもちろんですが、3D CADの導入支援、派遣先の会社独自のCADのマニュアル作成、また社内向けの講師をしたこともあります。

――いろいろなお仕事をされていますが、特に印象に残っているものがあったら教えてください。

山口さん:ある昇降機メーカーさんで、当時2D CADを使っていたのですが、ゼロから3D CADを導入したいとの希望で、そのシステム作りのお手伝いをしました。また同時に、全ての2次元図面を3次元へモデリングするプロジェクトにも関わりました。

導入支援は、単なるInventorの導入ではなく、ExcelとInventorを連携させてExcelにパラメータを入力すると自動でInventorに引き継ぎモデリングするプログラムの開発にも協力しました。エスカレーターは、基本構造は同じですが、高さにより、例えば手すり下のガラスの1枚の長さなどが最適になるように部品を設計する必要があります。これらを、Excelに必要なパラメータを入力するだけで、自動計算してInventorに引き継ぐようにしたのです。

また、モデリングでは、エスカレーター1機種全体を一人で2Dから3Dへモデリングしました。エスカレーターは構成部品が多く、例えば、足を乗せるステップ箇所一つとっても、表面は平ではなくギザギザしていますがその加工箇所は㎜以下の曲線を描く必要があり、これを複数展開し1つのステップを描いていくのです。エスカレーターは意匠面も大きいため加工が細かく、また見えている部分だけではなくその中には鉄骨フレームがあり、モデリングとパラメータで膨大なデータとなります。これら全てを、2次元AutoCADデータから、Inventorで正確にモデリングしていきました。このフルモデリンングには、導入支援等の仕事も並行しながら2年程かかりました。

――難しそうですね。でもお話を伺っていると楽しそうです。3D CADがお好きなのですね。

山口さん:その仕事は面白かったですよ。Excelのパラメータやその説明文や注意点を書いたりなど、自分のライティングのスキルも活かせましたし。もう1回やりたいです。 3D CADは好きですね。物理や機械を専門に勉強してきたエンジニアが多数いる中で、自分は3D CADを得意にして仕事をしてきました。

――今後やってみたいことなどありますか?

山口さん:3D CADのトレーナーもやりたいです。記者の経験のあるエンジニアはそういないと思いますので、その経験から得られた文章でも口頭でも説明する能力を活かせられたらと思います。3D CADはまだまだ誤解があり、その魅力を知らない方が多いと感じていてもったいないと思います。これまでの私の経験を伝えて、多くの方が3D CADの理解を深め、また使いこなすエンジニアさんが増えることで、ものづくりの業界に貢献していけたらと思っています。

社会へ出てからご自身の進みたい業界へ転職された山口さんのインタビューは、ものづくりと3D CADへの熱い思いが伝わってくるものでした。そういう方がトレーナーになられたら素晴らしいですよね。後輩を育てていきたいとう今後の目標に向けてぜひ頑張ってください。応援しています。