ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会

CADエンジニアの先輩に聞く

vol.4 服部真二さん

2019.7.10

国内大手住宅設備機器メーカーで17年以上に渡り室内ドア、フロア材、作り付け収納家具等の開発設計を手掛けている服部真二さんに、CADの仕事についてお話を伺いました。


服部真二さん
国内大手住宅設備機器メーカー
インテリア事業部 インテリア商品開発部 先進開発室 室長
服部真二さん

――お忙しいところインタビューに応じていただきありがとうございます。早速ですが、御社はキッチン等の水回り製品から建材まで住まいに関わる製品を数多く開発、提供されていますが、その中での服部さんのお仕事についてお聞かせいただけますか。

服部さん:数年先を見据えた、住まいの室内建具、例えば室内ドア、フロア材や作り付け収納家具などの開発設計をしています。ラフスケッチを2次元で、その後動き(例えば、ドアの開閉など)も含めた3次元データを作成し、デザイナーに渡し、デザイナーが空間デザインの詳細をCGや3D CADでデザインしていきます。

――どのように開発するものを決めて、また設計を進めていくのでしょうか?

服部さん:こういうものが良いのではないかと、提案する場合もありますし、上司などからの指示や依頼によってテーマが決まることもあります。一つのテーマの開発期間は、既存品のアレンジや改良の場合には3次元データもあり、お客様へヒヤリングするときにもあるので数か月程度ですが、新しいものだと年単位で開発期間がかかるものもあります。

設計では、まずは外部(建設関連のプロユーザー様)の方や社内関係者へヒヤリングします。ヒヤリングばかりしているわけではありませんが、大きいものでおおよそ数か月程度でしょうか。そこから3D CADでプロトタイプを設計していきます。CADソフト上でのバーチャルな評価を行い、修正し解析していきます。プロトタイプ設計ができたところで実際に製作して耐久性、外部からの力、水分などのストレスを試作品に与えて評価を行います。試作品製作は、部品の特性や技術レベルにより社内工場、部内の3Dプリンター、また3次元データを渡して外部のMC(マシニングセンター)や3Dプリンティングサービスを利用して製造します。この評価に基づいてさらに改良を加えて設計を完成させ、最終設計を担当する部署へ渡します。

――2Dと3D CADは、設計するプロダクトや利用する場所によって使い分けるのでしょうか?

服部さん:頭の中のイメージの見える化、構造設計や空間デザインでは3D CADを使いますが、詳細設計や開発設計等の実際の細かいやり取りでは2次元図面を使っています。ただこれはプロダクトの特性や事業部によっても異なり、全社的には製造まで含めて3次元データの共有に取り組んでいます。

――室長としての管理業務もあるかと思いますが、お仕事でCADを使う時間はどの位なのでしょう?

服部さん:先進開発室には複数の設計企画メンバーがいますが、現場が好きなので設計もしています。ヒヤリング領域などCADを使わない時や、毎日4,5時間使う日が続く時期もありますが、1年にならすと15%位使っている感じでしょうか。またサイズやデザイン展開する製造に近い部署には、海外の工場にCADスキルの高い設計部隊もあります。

――最初から3D CADを使われたのでしょうか?どのようにCADを習得されたのでしょう?

服部さん:私が開発部門に入った時に、ちょうどMechanical Desk Top(3D CAD)やRapid Proto Typeを導入し始めたところで、2Dも3Dも並行して覚えました。
大学でも多少触りましたが、本格的に勉強したのは今の部署に異動してからです。設計に必要なため社内の初級講座を受け、その後は社内のCADのヘルプデスクや社内編纂マニュアルを利用しながら実務で覚えていきました。

――CADの仕事で難しいこと、また良かったことなど何かありますか?

服部さん:難しいという表現が正しいはかわかりませんが、3次元画像と実際に製造したものの差が大きいことがあります。例えば、画像と比べて実物は隙間が目立つ、尖がった印象になるなど、イメージが異なることがあります。ただこれは経験を重ねることで、ある程度脳内で補正できるようになりますね。

良かったこととしては、商品開発に携わるいろいろな部門に説明する際に、3次元データを使うことで理解が深まることです。設計を始めた当初は2次元図面だったのですが、2次元と3次元データでは、例えばフレームを細く感じるかどうかなど、感じ方が異なります。実際に製作するのにはコストもかかるので3次元データ上で意見を聞けることは3次元データを利用する醍醐味だと思います。

――仕事で必要なスキルが他にありましたら教えてください。

服部さん:自然科学全般の知識が必要です。3D CADソフト上では自分の好きなようにどのようにでも画をかけますが、実際のものとして設計する場合には、自然科学的に理に適っていないと造れません。物理学と材料力学が製造にマッチする必要があります。例えば、ここに力が加わるのでこうあるべき、などを理解して設計しなければ、同じ3D CADで設計していても質と無駄時間の量が違います。最終的にはソフトで解析もできますが、描き終えた後になるので手戻りが発生します。私は大学でこの分野を勉強したのですが、これまで勉強する機会がなかったメンバーは入社後に自分で勉強したり、実務で失敗をしながら覚えています。

――最後に今後学んでみたいこがありましたら教えてください。

服部さん:CGができると良いかもしれません。頭の中で考えたものを3D CADで作り、完成形のイメージをCGで描けるとものづくりの全行程に携わることができるので、面白そうだと思っています。

――

設計企画のメンバーをまとめながら実務が好きだから、とご自身でも設計をされている服部さん。実際のCADデータを拝見しながらのインタビューで、設計のお仕事への想いが強く伝わってきました。これからも私たちの住居を彩る商品を開発されることを応援しています。