vol.3 海住健太郎さん
15年以上に渡り、機械部品の設計・製造会社で設計者として活躍している海住健太郎さんにお話しを伺いました。入社時には2次元CAD、今は3次元CADを使って機械部品を設計・開発されています。
設計者として活躍されている海住健太郎さん
海住さん:会社では、専用の用途で使われる機械部品をメーカーと共同で開発しています。はじめの段階では、部品の設置スペースや性能等メーカーからの要件に基づいて設計するのですが、提示されたスペースでは性能を満たすことが難しい時などもあり、メーカーと打合せを重ねながら設計してきます。この提案が通ると、開発に入り、その後、量産されサポートになり、今は、このサポートフェーズです。以前は平面図で設計していましたが、ここ10年ほどは、設計だけではなく、開発やサービスマニュアル制作でも、3D CADを使っています。
――1製品の開発から量産まではどのくらいの期間、またどのようなチームで行われるのでしょう?
海住さん:企画から量産まではおおよそ3~5年で、私は設計からすべてに関わっています。設計するものにもよりますが、今の機械は、構想設計時に2~3人、量産準備段階では8~10人で、評価部門にも同人数いました。メーカーとの打合せその他の時間もあるので、全体の仕事のうち、3D CADを使うのは半分くらいでしょうか。
――CADはどのように習得されたのでしょう?
海住さん:そもそも、ものづくりを希望していて今の会社に入りました。2003年の入社時は2D CADがメインだったので、2D CADを習得。ただその頃から3Dでやろう!という話は上がっていて、入社前から導入していましたが、全面的に活用するようになったのが2005年ころで、メーカーが実施している外部研修等で勉強しました。外部研修は、基本操作が中心で実務で使うレベルではなかったので、使いながらノウハウを社内共有しました。CADが使いたい、というよりは、機械設計ではCADを使用するのは当たり前なのでツールとして使用しています。
――これまでCADを使って設計されてきた経験から、CADに関わる仕事で求められるスキル・知識は何かありますでしょうか?
海住さん:CADを使う人は機械設計の知識を多少は持っている必要があると思います。その中でもモデリングする上では特に製造方法に関する知識ですね。素材の工法に合わせた原点戦略だったり、加工方法など、作るための知識がないと開発で変更が必要になったり、変更に時間がかかったりします。ほとんどの3Dのモデルでは、初めから金型を起せるくらい細かいところまで作るので、製造を考えてモデリングできるかがスキルの分かれ目だと思います。
――3D CADに関連して3Dプリンターも使われているのでしょうか?
海住さん:はい、試作段階では結構使っていました。モデリングした部品の確認、干渉関係を見たり、部品性能の検証で使用していました。一番初めに入れたのは15年位前で、それから何世代か代わり、今は紙にプリントするのと同じ感覚で使っています。
――仕事で難しいと思われることは何でしょうか?
海住さん:当たり前のようですが、「作れるものを設計しなければならない」ことです。2Dでは、最低限押さえておくポイントを描けば、曖昧な箇所があってもメーカー側が開発するときに吸収してくれることもあったのですが、3Dではそれはありません。3Dの完成度への要求が上がったように感じます。
――仕事のやりがいや今後についてお聞かせください。
海住さん:自分の考えたものが世に出るというのは、ものづくりに携わるものとして幸せな環境にいると思います。私が設計するのは量産品なので、市場にずらっと並ぶのですが、そういうのを見ると苦労がふっ飛びますね。
昔のCADはソフトウェアごとの癖やモデリングでの理不尽なエラーがありましたが、最近はソフトウェアの品質や性能が良くなっています。以前と比べて短い時間で良い品質のモデリングができるので、より良い製品を作っていけると思っています。
――
インタビューではCADソフトウェアや3Dプリンターを軽々と使いこなして設計、開発されているご様子がうかがえ、ものづくりへの想いと喜びが伝わってきました。これからも数多くの良い製品を作り出してくれることを応援しています。