ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会

学校訪問レポート

vol.2 トライデントコンピュータ専門学校

2020.4.3

名古屋駅からほど近く、日本のモノづくりの中枢エリアに位置するトライデントコンピュータ専門学校。
抜群の就職率を誇る同校の授業や取り組みの様子を伺いました。

松下さんと恒川先生
松下さんと恒川先生
お話をしてくださったのは、CAD学科主任恒川桂子先生と、入学事務局の松下耕大さん。
恒川先生は、CADの指導と共にCAD学科のクラス担任をされています。松下さんは、入学前の学生さんに、「CAD」がどういうものか、また「CAD学科ではどのようなことを学び、身に付けることができるのか」を分かりやすく発信していらっしゃいます。

 


「コンピュータ」の専門学校です

同校で学べる内容は、大きく分けてクリエイティブ系と情報(IT)系の2つに分かれる。 クリエイティブ系はCAD学科のほか、ゲームサイエンス学科、CGスペシャリスト学科、Webデザイン学科。情報(IT)系は、サイバーセキュリティ学科、高度情報学科、情報処理学科、情報キャリアプロ学科がある。

恒川先生の言葉をお借りすると、「クリエイティブ系は解のないもの。情報(IT)系は、解のあるもの」。CAD学科は、クリエイティブ系のカテゴリーではあるが、実際はその両方の学系知識を学ぶ中間に位置する。

基礎から応用まで、2年間でみっちり学びます

CAD学科は全日制の2年制。いま1年生19名、2年生18名が学んでいる。1年生はまずはAutoCADソフトで前期で2次元CAD、後期で3次元CADに触れる。後期の3次元CADは、「まずは空間把握能力を身に付ける」ことを重視する。

同時に基礎数学、図学製図、機械工学基礎、基礎デザイン(パース、ラフスケッチ)といった授業で、関連基礎知識の土台をしっかり固める。

自動車
学生による自動車設計
2年生は、引き続き設計、機械工学、材料力学などと共に、CATIAを1年間みっちり学んで使いこなせるようにしていく。

「企画設計」という授業もあり、「自動車」「ロボット」というテーマからどういうものを作るかという企画を起こし、企画書から設計、最終的なプレゼンまでを授業内で実施する。「やるからには特許を取得できるレベルのものを作成する」意気込みで、学生たちは企画設計に取り組む。 

※1月に実施された「ロボット開発」の様子はこちら。松下さんはCAD学科の取組をより分かりやすくこのようにWebなどで紹介している。 

なお同校は文部科学省から「職業実践専門課程」の認定を受けており、年に数回企業や業界の担当者から直接業界動向、カリキュラムに関する意見をヒアリングして、カリキュラム内容を常に現場のニーズにマッチするよう見直しを行っている。

恒川先生を筆頭に、同校の先生方はリアルな現場で必要とされる知識技能を徹底的にリサーチし、それが身につく最善のカリキュラムを練り上げる。学生たちは、その最適化された授業を受けることができる。

進級展と卒業制作展

それぞれの学年の最後には、総まとめとなる進級展と卒業制作展の作品制作に取り組む。卒業制作作品は2ヶ月ほどの短い期間のなかで、授業時間だけでなく多くの時間を費やし、持てる力をすべて注ぎ込んで作品制作に挑む。

作品
作品
さまざまな進級展・卒業制作展の作品

1年生は後期に学んだ3次元CADを生かし、「8パーツ以上に分解できる身近なもの」を3次元CADでモデリングする。恒川先生から学生への指示は、「必ずいつも使っているような身近なものを題材に選ぶこと。」

「必ず家から持ってきてもらいます。それを分解すると、私がいちばん言ってほしかった言葉を言ってくれるんです。『こんなところにバネがついてた!』とかね」と恒川先生は嬉しそうに話す。

身近なものを分解して「こんな仕組みになっていた」という気づきを先生は重要視されている。

2年生は、卒業制作展の開催時期には就職先が決まっているため、就職先の企業に関連した「モーターがあって動くもの」を各自が3DCADでモデリングする。入学から2年、社会に出て戦力になる力が身についている。

今年も2月7日、8日に、これらの作品を展示した「進級展、卒業制作展」が開催された。これから進学希望の生徒さん、卒業生、そして企業から多くの見学者が訪れた。

進級展
教室で開催された進級展の様子

対人能力を上げていく

最近どこの学校でも先生方が頭を悩ませているのが、学生の「コミュニケーション能力」の向上。礼儀はもちろん、相手の意図をくみ取り対応する力、グループで協力して何かを作り上げてプロジェクトを進めていく力。

実は同校の教室を見せていただいて、思わず目に入ってしまったのが教室に貼ってあった「返事、挨拶、相槌」の掲示。1年2年のCAD学科クラスの担任も務める恒川先生によると、「まず基本なのですが、なかなか最初からはスムーズに出来ません」とのこと。すべてはまずはここからなのだそうだ。

掲示
教室に貼ってある掲示

就職に向け正規授業の中での「社会人基礎力向上」の授業もあるのだが、恒川先生は通常のCADの授業の中で折に触れてまずは「返事、挨拶、相槌」が習慣化することを意識されている。

恒川先生とお話ししていると、先生がテンポよく生徒たちに「ハイ挨拶!」「はいそこ返事聞こえないよ!」などと声をかけ、学生たちがつられて返事をしているうちに、いつの間にか自分から挨拶したり返事ができるようになる様子が目に浮かぶ。

通常の授業のなかで先生方が意識的に指導されることで、それが無意識のうちに学生の身に付いていくようだ。

あっという間に始まる就職活動、そして抜群の就職率

2年制であるため、1年の頃から就職に向けた準備が始まる。1年次から企業研究、プレゼンテーション演習が入り、就職に向けた意識付けを行う。

2年生になるとすぐに実際の就職活動の開始になる。各自の就職研究に加え、同校は年6回確保するという担任と学生の面談の中で「何をしたいのか」「どういう適性があるのか」「地元で働きたいのか、こだわらないのか」など、自分が働くということを具体的にイメージできるようにしていく。そのうえで就職担当の先生も加わり、そのニーズにあった企業とマッチングする。徹底した自己分析と企業研究、同校の実績からくる企業からの求人により、同校の学生は、活動開始後早い段階で就職が決まる。

自動車、航空・宇宙関連機器設計、住宅設備機器、機械器具等、多くの企業で卒業生が活躍している。

資格への取り組み

同校では1年次に2次元CAD利用技術者試験、2年次に3次元CAD利用技術者試験の資格取得に向け、学生全員を対象とした集中対策講座を実施している。

「寝ちゃうといけないのでね、筆記⇒実技⇒筆記⇒実技の順で授業するんです。」と恒川先生はいたずらっぽく笑う。

資格対策以外にも、公式ガイドブックに記載されている数学の内容を授業で使ったり、主催のACSPが敢えて必要と考えガイドブックに掲載しているCAD以外の周辺知識の部分も積極的に活用するなど、CAD利用技術者試験を単なる資格取得目的以上に活用されているようだ。

 

企業のニーズを把握する努力とともに、それを確実に身に着けられる環境とカリキュラムで、学生たちに力をつけて社会に送り出すトライデントコンピュータ専門学校。 ここで過ごす濃い2年間で、社会で活躍する人材が育つのだなと強く感じました。

お忙しいところ長時間のインタビューに対応していただいて、ありがとうございました。